本屋さん減少率No.1の和歌山県で新しく本屋さんがオープンする理由
こんにちは、ながっちです。
かつて、「宮井平安堂」だった場所の解体工事が進んでいます。
宮井平安堂とは、和歌山市民ならおなじみの
「まちの本屋さん」。
昔たくさん通った、という声もよく耳にします。
1893年創業という100年以上の歴史を持つ
この本屋さんは2011年に本屋としての
事業から撤退していました。
(文房具のみの販売となっていました)
当時、この出来事を嘆いたブログも
たくさん見つかります。
和歌山の中心で、郷土愛をさけぶ 「津田書店」「宮井平安堂」閉店
嗚呼!宮井平安堂!(老舗書店の撤退) - 美容総合商社-株式会社マックス-
和歌山で本屋さんが減り続けている実感、
皆さんにもあるのではないでしょうか。
タイトルにもなっている本屋さん減少率については
2000年と2010年を比較したデータを参照しています。
asahi.com(朝日新聞社):消える書店、10年間で29%減 和歌山県ではほぼ半減 - 出版ニュース - BOOK
この期間の本屋さん減少率は和歌山県が最も高く、
257店舗から137店舗へ半減したとあります。
とはいえ、和歌山市内には
TSUTAYA WAYなどの
十分な品揃えの大型書店があるし、
Amazonでも気軽に買い物できる時代。
それでも、閉まる本屋に嘆く声があるということは
まちの小さな本屋さんに
まだ求めることがあるということなのでしょうか。
さらにいうと
本屋さんの役割って「本を売る」だけなのでしょうか?
和歌山の本屋さん事情
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最近では、「津田書店」「上野山書店」など、
歴史の長い「まちの本屋さん」が
次々と閉店されました。
そんな現状の中、
現在和歌山県内で営業している最も古い本屋さんは
ぶらくり丁大通りにある「帯伊書店」さん。
なんと1619年の創業で、
約400年もの歴史を持つ書店さんです。
帯伊書店さんは、
ただ本を販売するだけでなく
約200年前には「版元」として出版業にも乗り出していました。
当時7代目店主であった
帯屋伊兵衛志友(おびやいへえしゆう)さんが編纂し
1811年に出版したのは
「紀伊国名所図会」
国立国会図書館デジタルコレクション - 紀伊国名所図会. 後編(二之巻)
これは江戸時代の城下町の景観と
人々の暮らしを描いたものだそうです。
本を売るという業態からの自然な流れで
出版という形でまちの情報を形にして
発信する役割も担っていたんですね。
さらに、志友さんは
私財をなげうってまちの困難を解決したり
和歌山市内に建て貸しの芝居小屋を開設した
という記録も残っています。
偉大すぎる...
まちと本屋の関係は思っていたより
深いのかもしれません。
現店主の14代目高市健次さんのインタビュー記事が
約10年前のものですが、こちらに掲載されています。
本を、「世界が広がる特別なもの」
と表現されているのが印象的です。
最近では「帯伊書店ものがたり」
という本を出版されたそうですよ!
世間の本屋さん事情
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最近は「泊まれる本屋(BOOK AND BED TOKYO)」
なども話題になったりと
本屋というあり方が多様に変化しています。
わたしは先日、
京都と長野に旅行に行ったのですが、
どちらも「本屋」を意識して巡ってみました。
それぞれの本屋さんが
掲げるコンセプトと一緒に挙げてみます。
▼京都「天狼院書店」天狼院書店
“「本」だけでなく、その先にある「体験」までを提供する次世代型書店”
▼京都「誠光社」誠光社
“本屋の新しいあり方を提案すべくはじめたささやかな実験”
▼京都「ホホホ座」ホホホ座
“本がやけに多いお土産屋”
(本を仕事にする、でも本に頼らない。「ガケ書房」改め「ホホホ座」山下賢二さんに聞く、もっと自由に“本を商う”方法 | greenz.jp | ほしい未来は、つくろう。より引用。)
“本にまつわるあれこれのセレクトショップ”
▼長野県松本市「栞日」 栞日 sioribi
“心地よい暮らしのヒントを集めた本屋”
▼長野県長野市「ch.books」 ch.booksのたまに更新するブログ
"旅とアートがテーマの新刊書店”
恵文社さんこそ
1975年設立と40年以上の歴史がありますが、
それ以外のお店はここ10年以内に新しくできた、
いわばニューウェーブ系な本屋さん。
(ホホホ座さんの前身「ガケ書房」さんは2004年オープン)
少なくともすべて
「何でもある本屋」ではありませんでした。
そして、これまで言われてきた「本屋」という定義に
簡単にあてはめられる場所でもないのかもしれません。
どうやらそんな場所が全国に
じわじわと増えてきているようです....
人とまちを繋ぐ本屋さんへ
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そんな前置きを踏まえつつ、やっと本題。
3月8日に、
和歌山市万町(フォルテワジマ近く)に
新しい本屋さんがオープンします。
名前を「本屋プラグ」といいます。
2年半前から「PLUG」という名前でシェアキッチン&イベントスペースとして
運営してきた場が、どの世代にも呼びやすいようにと「本屋プラグ」に名を変えて
本格的に本屋としてリニューアルします。
PLUG: a Shared Kitchen and Table Talks
3月5日にはオープンに先駆けて「一箱古本市」も開催されます!
これまで、普通のカフェだった場所が
「本屋」と名を変えることによって
様々な世代の人が立ち寄ってくれる場になる。
プレオープン期間の今、
そんな変化を目の当たりにしています。
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本屋プラグはコンセプトの一つとして
「帰省者とまちを結びなおす新しい本屋」を掲げています。
(2023年現在、当時とは異なるコンセプトにて営業されています。)
県外の大学への進学率が27年連続第一位の和歌山。
平成26年は県内高校を卒業した5021人のうち
4333人が県外の大学に進学しました。
和歌山の高校生、86%が県外の大学へ 27年連続「全国一」 - 産経WEST
外に出ること自体は全然悪いことでは無いと思います。
ただ、「仕事がない」「遊ぶ場所がない」「田舎だ」
という思い込みだけで帰ってくるという選択肢を
無くしているなら、
それはとてももったいないことです。
本屋プラグでは
和歌山出身者と和歌山を繋ぎとめる手段の一つとして
お盆とお正月に「ジモト遠足」という冊子を
発行する予定です。
詳しくはこちらに書いています。
まだ詳細は決まっていませんが、
「ジモト遠足」はこの「ワカヤマチック」の
延長線上でもあると思っています。
そしてなんだか帯伊さんの出版事業とも
通じる所があるのではないでしょうか。
わたしはこの春、
和歌山大学観光学部を卒業しますが、
この「本屋プラグ」で働くことになりました。
(わたしはカフェ担当で選書担当は三木さんという女性です)
もともと「ホテル」や「テーマパーク」などの
非日常なキラキラ空間に
憧れがあって観光学部に入ったのですが
いまは、日常のど真ん中から世界を広げる存在である
本屋や、カフェのような場所に意味を感じています。
↑わざとらしく日常感を演出した写真
こんなふうに(?)、何気ない日常が
もっと楽しくなるような「本屋さん」に
なったら良いなぁと思います。
みなさんもぜひ遊びに来てくださいね~!
それでは、雑誌とかでよく見る
人がシュッてなった写真でさようなら~!